my favorite things

 
貨物列車が好きだ。
 
何が、どう好きなのか、と聞かれると返答に困るが、あの佇まい、とでも言おうか、あの存在感が好きだ。

そもそも乗客が乗っていない時点で、貨物列車に物語性は薄い。鉄道を題材にした小説は数多いが、貨物列車を主題にした本というと、絵本程度しか見たことがない。
貨物列車を主題にした本があれば、ぜひ読んでみたいので教えて欲しい。鉄塔を主題にした小説もあるくらいだから、探せば有ってもおかしくないだろう。
 
閑話休題
 
まずコンテナ貨車が良い。
積載されたコンテナが統一されていると、様式美がある。けれども、コンテナがバラバラなのも悪くない。次にどんなコンテナが来るのか、待つ楽しみもある。ところどころコンテナが乗っていない、歯抜け状態も悪くない。
全くコンテナが載っていないと流石に物寂しいが、空車両が続いた後、後ろの車両にポコンとコンテナが載っていると不意討ちされたようで、それはそれで楽しい。
 
タンク車も悪くない。石油を運んでいる都会派も良いが、硫酸だとか、物々しい薬品を運んでいるちょいワル系を見ると、ご安全に!と指差喚呼をしてしまうのは、職場の工場研修で培った職業病だ。
いずれにせよ、貨物列車はピカピカよりもすこし薄汚れていた方が、良い。判官贔屓かもしれない。
 
 
忘れてはいけないのが機関車だ。
機関車に貴賤なし、電気機関車ディーゼルもどちらも好きだが、機関車は何より音だ。ホームで列車待ちをしているときにやって来る貨物列車は、まず機関車の力強い音からやって来る。日常乗る列車と全く違う重厚音は、これから来る十数両のイントロとしては申し分ない。

音という意味では、ややディーゼルに軍配が上がる。
黒煙を吐き出しながら大音量で通過する貨物列車は、男の子の羨望の的に違いない。
 
 
 
いずれにせよ、時間は夜だ。
人気のないホーム、闇の中からやって来る貨物列車は、色とりどりのコンテナをぼんやりと見せながら、ペースを変えずにゆっくりと去る。
旅情は無いが、風情はある、といったところだろうか。貨物列車はじつに良い。
富豪になった暁には、豪邸の庭に貨物列車を走らせたいものだ。