アマチュアという名のプロ

伊丹に飛行機を見に行ったわけだ。たぶん厳密には豊中市になるんだと思うが、大阪空港滑走路のすぐ脇に道路があって、そこから着陸寸前の飛行機を眺めることができるわけで、しかも10mそこそこの高さを飛んでくるのだから、かなりのはくりょくだ。
そこでぼんやりと飛行機を眺めていたら、ひとりのオッチャンがとことこやってきて、遠くに見える飛行機のライトを見るなり、「あれはMDいうやつで、胴体の長いやつだ」とか「いま飛んできたのは貿易センタービルに突っ込んだのとおんなじかたちのやつ」「いま見えてる飛行機は、大阪城の上あたりを飛んでる。その後ろから来てるのはまだ50キロくらい離れてる」などなど、やたら飛行機に詳しいのだ。一体何者だ、このオッチャン。と思っていたら、「今日はそろそろ帰ろ」とつぶやき、どこかへ去っていった。50キロ離れた飛行機のライトを見るだけで機種を判別できる特殊技能、実生活では全く役立たないだろうけど、すこしうらやましかった。
持参したデジカメで飛行機の写真を撮ろうとして、なかなか上手く撮れないところを見ると「そんなんじゃあかん、もっとごついのでバババババと連写せな」という的確なアドバイスまで頂いた。周りをみると、確かにレンズだけで数万円しそうなハイエンドアマチュア向けカメラをもったアマチュア写真家が勢ぞろいしていた。そんなアマチュアと言う名のプロみたいななかで、一番プロっぽいのが手ぶらで来ていたオッチャンだったわけで、ぼんやりとああいう存在感を仙人と言うんだろうなぁ、と思った日であった。