車線変更25時

深夜のドライブが好きだ。
 
昼間と違い交通量が少ないから、自分のすきなペースで走れるし、暗い分、余計な景色が見えないので、運転自体を楽しむことが出来る。
快晴の夜などは、コンビニで暖かい紅茶を購入し、山まで走る。
 
見通しの悪いワインディングロードを、安全を確保できる限界のスピードで走りぬける。昼間なら取るに足りないスピードだが、深夜なら、体感速度はじゅうぶんに速い。
右カーブ、左カーブ、すこし下ってまた登り。トンネルを抜けると、長い上り坂。
上り坂を上がりきったところには、スキー場の駐車場がある。
 
オフシーズンのスキー場だから、人の気配は微塵も無い。
シーズンには満車になるであろう、そのだだっ広い駐車場の端っこに車を止め、遠くに見える街の明かりと、遥かに見える漆黒の海を見つめる。
聞こえるはずの無い潮騒が、斜面を駆け上り聞こえる気がする。
 
すこし冷めた紅茶を飲み干し、ふたたびイグニッションを回す。
ヘッドライトが、暗闇の中に帰り道を示す。
 
駐車場の広さを目一杯使い、大きくUターン。ギアをセカンドに入れ、長い坂を、ゆっくりと下ってゆく。
プレーヤーに入れたBGMが、ランダムに再生される。刹那、学生時代によく聞いていた曲が流れてきた。
丁度、深夜のドライブをテーマにした曲だ。
 
 

 
 

学生時代の楽しかった出来事、懐かしい過去が、フロントウィンドウに反射してあふれ出す。
徐々に近づく街の明かりが、明日の訪れを音も無く告げる。
 
同時に、プロモーションビデオで踊り狂うボーカル伊藤氏のダンスが脳裏に再生され、今日の余韻を台無しにした。