小京都研究会

小京都とは何か。
日曜日の昼下がり、徒然にテレビを見ていると、小京都を旅行する番組を見ることがある。
以前に私が見た番組では、白壁の脇をせせらぎが流れ、錦鯉が数匹、悠然と泳いでいる。それを見た旅人の女性タレントが、「わぁ、京都っぽいですね」などとコメントをするわけである。
なるほど、風情がある観光地だ。休みの日に、女の子とこんなところを歩いたら、楽しいだろうな。などと思う。
しかし、女の子と歩く妄想を一時停止し、学生時代を過ごした京都を思い出してみる。ところが、あのような白壁の建物、脇を流れるせせらぎ、悠然と泳ぐ錦鯉などは、四年間で一度もお目にかかったことが記憶が無い。
京都の白壁は平安以来の時間の蓄積で、どれもこれも白くなく、かならず黄色味がかかっており、鴨川はせせらいでいないし、堀川はどぶ川、せせらぎと呼べそうなのは高瀬川だが、あの浅さでは錦鯉も悠然と泳ぐことは出来ない。琵琶湖疎水では琵琶湖から流れてくるブラックバスは居るだろうが、錦鯉など、泳いでいる風情は無い。
では、あの女性タレントは一体何を見て「京都っぽい」という判断を下したのであろうか。それは「なんとなく歴史がありそうな雰囲気」という根拠もへったくれも無い判断であり、実際に京都にそれっぽい場所があるか否かは、関係ないのではなかろうか。
いったい、小京都とはなにものなのか。いったい、だれが決めているのか。


全国京都会議*1という団体がある。
全国各地の、いわゆる「小京都」と呼ばれる自治体が加盟した、いわば小京都のための団体である。加盟基準は以下の三点。
1.京都に似た自然と景観
2.京都との歴史的なつながり
3.伝統的な産業と芸能があること
なるほど、歴史と伝統、そしてなにより「京都と似た自然と景観」が重要視されるわけである。
驚くべきは、この「全国京都会議」には、当の京都市も加盟しているということである。まさに、小京都を京都が認定する、オフィシャルな団体と言えよう。

はたして、それで良いのだろうか。
もちろん、この「全国京都会議」は小京都のあり得べき一つの形かもしれない。
しかし、当の京都市が加盟していることで、京都の良い部分、綺麗な部分のみをピックアップしているのではなかろうか。
私はあえて問いたい。山科は、小京都の基準となる京都であろうか。宇治は京都に入るのか。亀岡や福知山は、小京都になれないのか。
そして、小京都を認定する団体は、たった一つでよいのだろうか。

そこで私は、小京都界のミシュランを、ムーディーズを目指し、日本全国津々浦々、新たな小京都を発見し、また、これまでの小京都が果たして小京都たり得るのかを、じっくりと見定め、インターネット上に公表したいと思う。
そのための機関として、私は小京都研究会を発足させることを、今日、ここに宣言する。