二輪を買おうと思う。そのうち

二輪車の免許を、取ろうかと、思っている。東京の街は、地下鉄がある、JRがある、東武西武小田急東急があるし、バスも走っているから、何処に行くにも、さほど苦労しないが、何処に行くにも、結局駅まで、或いは駅から歩かねばならず、さらに付け加えるならば、駅の中もかなりの距離を歩かねばならず、たとえば大手町の駅などは、目的の路線にたどり着くまでに、何回も階段を上り下りし、関係のない路線のホームを端から端まであるかねばならんことも、これあるわけで、実際のところ、中途半端な田舎町に住むよりも、体力的に厳しいのではないかと思うのである。
田舎に住めば、買い物に行くにも、基本的に車であるし、駅構内も、大手町や新宿ほど広くはないから、子供時分はさておき、自動車を運転できる年齢になれば、むしろ体力的には都会より楽ではなかろうか。
では、都会でも車を買えば良いという話に相成るわけであるが、ガソリン代、車庫代、車検、自動車重量税、雪道用タイヤ、眠気覚ましのガム、装飾用のカーテン、車外のひとにアピールするためのディズニーグッズなどを買わねばならず、非常に手間、費用がかかるものである。
そこで二輪車である。原付ではこころもとないが、90cc程度の車両であれば、費用もかからず、また、行動範囲も広がるため、快適であろうことは想像に難くない。休日は代々木公園までツーリングだとか、幕張までちょいと足をのばしたりだとか、お洒落ではないか。素敵ではないか。もう少し大きい二輪なら、二人乗りもできるし、後ろに妙齢の女性などをのせて、箱根や日光に行くのも良いし、90ccで実家まで気ままな旅もよい。
いいことづくめの二輪であるから、早速インターネットで見繕った。教習所も探した。でも行けそうに無かった。お金が無かった。だから俺はしばらく、自転車に乗ったときにブルルルルと口ずさみながら、後ろに妙齢の女性が乗っている気分で、浅草界隈を走り抜けることにするよ。
金が溜まるまでは七輪を買って、五輪を見ながら妄想にふけるよ。